第78章 彼はいつあの子に気づいたのか

ナタリー視点

目を開けた。

彼の顔が、すぐそこにある。夕陽の赤が輪郭を染め、まるで何かに操られているみたいに見えた。

動けない。何かにがっちり固定されている。脈も、呼吸も、全部リズムを失っていた。

唇と唇が、やけに近い。ほんの少しでも身じろぎしたら――触れてしまう距離。

彼はその姿勢のまま、しばらく止まっていた。やがて体を起こし、私の頬から手を離す。

「騙すのも一苦労だな」

背を向け、山の稜線に残る最後の光へ視線を投げた。

私はベンチに腰を落としたまま。脚が、もう私の体を支えてくれない。

頬に触れる。陽射しか、あるいは彼の手の熱か。じり、と火照っている。心臓はまだ喉の奥でど...

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