第84章 純真なエルヴィン坊や

エルヴィン視点

ナタリーは俺たちに背を向ける形で腰を下ろした。座り直して動きが止まったのを見届けてから、俺はテーブルへ回り込み、ジェームズを一瞥する。

「シャツのボタン、留めろ」

「暑いんだよ」

にやついた笑みが、どこか勝ち誇った色を帯びる。

「お前だって暑いだろ? スーツにシャツにネクタイ、全部きっちり。脱げよ。俺の前では楽にしろって」

「その薄っぺらい仮面を脱げば、少しは涼しくなる」

「相変わらず言うね。で、終わり? それだけ? そんな簡単に切り上げる?」

視線の端でナタリーを捉える。ソファに固まったまま、ぴくりとも動かない。

動けない理由はわかっている。盗み聞きしてい...

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