第108章 欲求不満の飢えた男

綾瀬悠希は、全身を包み込むような窒息感に襲われていた。かつて溺れた時の記憶がフラッシュバックし、彼女はパニック状態で水面を叩いた。

 不意に、腰を支える手が現れる。

 生存本能に従い、綾瀬悠希はその「救いの神」に力いっぱいしがみついた。そのおかげで、ようやく肺に新鮮な空気が送り込まれる。

「げほっ、ごほっ……!」

 綾瀬悠希は激しく咽せ、涙目になりながら荒い呼吸を繰り返した。

 背中をさすってくれる大きな手がある。しばらくしてようやく落ち着きを取り戻した彼女は、自分がまるでコアラのように藤堂譲の体にへばりついていることに気がついた。

「大丈夫か?」

 藤堂譲が案じるように問いかけ...

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