第134章 離婚はしない

明さんのどこか含みのある微笑を見て、藤堂譲の胸に一抹の不安がよぎった。

 祖母上が急に心変わりしたのではあるまいか?

 菓子を手にした譲の代わりに明さんがノックをする。

「この時間なら、御隠居様はお目覚めでしょう」

「入りな」

 中から藤堂家の御隠居様の声がした。

 明さんがドアを開け、譲は皿を手に部屋へと足を踏み入れた。

 ベッドのヘッドボードに寄りかかっていた御隠居様は、入ってきた譲の姿を認めると、慌てた様子でベッドから下り、脇の椅子に腰を下ろした。

「おや、随分と早いお帰りだね」

 御隠居様がからかうように言う。

「ああ」

 譲は御隠居様の前に皿を置いた。

「帰ってすぐに顔を見せ...

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