第147章 若いうちにもう一人

「は、はい……行きましょう」

 その場にいる全員の視線が綾瀬悠希に注がれている。彼女は急に居心地が悪くなり、逃げるように藤堂譲の前を早足で歩き出した。

 事情を知らない者が見れば、どちらが送られる客なのか分からない光景だ。

 玄関を出ると、彼女は先に傘を開き、それから藤堂譲の傘を手に持った。

 藤堂譲が出てくるのを待ち、綾瀬悠希は彼に傘を差し出す。

「藤堂さん、お気をつけて」

 藤堂譲は傘を受け取らず、笑みを浮かべて彼女を見つめた。

「なんだ、そんなに俺に帰ってほしいのか?」

「そ、そんなことありません」

 綾瀬悠希は彼の視線から逃れるように目を伏せる。

「もう遅いですし、...

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