第171章 まるで負け犬のようだ

松坂詩織の笑顔が凍りついた。(余計なことを聞くんじゃなかった)と後悔が押し寄せる。

 一呼吸置いて、彼女は恐る恐る尋ねた。

「もしかして……綾瀬悠希のことですか?」

 藤堂譲は片眉を少し上げただけで、肯定も否定もしなかった。ただ薄く笑ってこう言った。

「悪いが、まだ仕事が残っているんだ。出かけたいのなら田中執事に言ってくれ。彼が手配する」

 松坂詩織は、藤堂譲が自分に少しは気があるのだと自惚れていた。だが、今の冷淡な言葉がその幻想を粉々に打ち砕いた。

 この求愛は、始まる前に強制的に幕を下ろされたのだ。

 ……

 不思議なことに、綾瀬悠希が使っていた部屋で眠るようになってからという...

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