第172章 苦心惨憺する老夫人

綾瀬悠希が家を出たのと時を同じくして、藤堂譲の元にも祖母から電話が入った。

「譲ちゃん、ちょっと本邸まで顔を出しておくれ」

「何かあったんですか、祖母さん」

 藤堂家の『ご隠居様』は、受話器の向こうで堪えきれない様子で笑った。

「あんたたち夫婦は本当に面白いねえ。来いと言えば素直に来ればいいものを、揃いも揃って用件を聞いてくるんだから」

「悠々ちゃんにも電話を?」

「ああ。あの子はもうすぐ着くよ。あんたも急がないと、可愛いお嫁さんに会えなくなるかもね」

 藤堂譲は声を弾ませた。

「分かりました。すぐに行きます」

 通話を終えると、譲は佐藤補佐に目配せをした。

 佐藤補佐は頷き...

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