第182章 まだその時ではない

「え?」

 綾瀬悠希は不意を突かれ、言葉に詰まった。あまりに唐突な問いかけに、思考が追いつかない。

 藤堂若葉もまた、期待に満ちた眼差しで綾瀬悠希を見つめ、その答えを待っている。

 藤堂家の御隠居様は、さらに藤堂譲のアピールを続けた。

「譲ちゃんはね、一見、油も塩も馴染まないような頑固者に見えるけど、実は人の話をよく聞く子なんだよ。それに、女性関係だって一途だしね」

 人の話を「聞く」というのは本当かもしれない。だが、一途かどうかなんて綾瀬悠希には知る由もなかった。

 そもそも、そんなことは自分には関係のない話だ。

 綾瀬悠希は困ったように笑みを浮かべた。

「大奥様、何かお忘れではない...

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