第197章 見捨てられた者

楠本南との通話を終えた後も、綾瀬悠希の脳裏には千々に乱れる思考が渦巻き、どうにも整理がつかなかった。

 真相はもう、手の届くところにある。だが、その「真実」とは一体どちらなのか。

 もし、望月恒の正体が本当に藤堂譲だとしたら――私はどう向き合えばいい?

 どうせ来月には会えるのだ。その時にすべて、望月恒本人の前で問い質せばいい。そう結論づけて一旦は静観を決め込んだものの、やはり悠希の視線は無意識のうちに藤堂譲を追ってしまう。

 その日の午前中、藤堂譲には会議の予定が入っていた。会議室の外から彼を見つめる悠希の中で、「藤堂譲=望月恒」説が急速に現実味を帯びていく。

 望月恒は以前、自分...

ログインして続きを読む