第26章 大衆の名前

杉山遠の厚意を断りきれず、綾瀬悠希はおばあ様が勘違いしないよう、先に帰ってもらう口実を探すしかなかった。

しばらくして、案の定、杉山遠が花束を手にやって来た。

「綾瀬先生、具合はいかがですか」

「もうだいぶ良くなりました。わざわざお越しいただいてありがとうございます。お食事はもう?」

「済ませてきました。もともと先生を藤堂家に行かせる手配をしていたのですが、断られてしまいまして」

「お手数をおかけしました」綾瀬悠希はすでにその結末を予想していた。

もともと、二日連続で休んでしまったので、今日また休むと藤堂若葉が授業についていけなくなるのではないかと心配し、誰か代わりの先生に行っ...

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