第28章 彼女が逃げて彼が追う

藤堂家を飛び出した凌乐悠は、ひたすら車まで疾走し、乗り込むや否や運転手に早く出すようせっつき続けた。藤堂譲が追いかけてきて、生皮を剝がされるのではないかと気が気でなかったのだ。

先ほどの自分の言葉は少々きつすぎたかもしれない。今後、藤堂家で働くのはもう無理だろう。彼女自身はどうでもいいが、若葉ちゃんが悲しむのではないかと、それが気がかりだった。

若葉ちゃんのことを思うと、また胸がずきりと痛んだ。

意外なことに、藤堂家から凌乐悠に出勤不要の連絡は来なかった。

藤堂譲は今日、わざわざ仕事を早く切り上げていた。凌乐悠が藤堂若葉とどう接しているのかを改めて見ておきたかったし、ついでに...

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