第41章 鼻血が出る

「綾瀬先生、すっごくきれい!」藤堂若葉が興奮して叫び、藤堂譲の手を振りほどいて綾瀬悠希の方へ駆け寄った。

「ゆっくり」綾瀬悠希は電話を切り、彼らの方へ歩み寄る。

二人の声に、藤堂譲はようやく我に返った。彼は胸の高鳴りを抑え、藤堂若葉の後に続いて綾瀬悠希へと向かった。

綾瀬悠希の前に立つと、藤堂譲はなぜか居心地の悪さを感じた。

「藤堂さん」綾瀬悠希は笑みを浮かべて彼を見つめる。「奇遇ですね、振り返ったらすぐ会えるなんて」

「ああ」藤堂譲は視線を逸らし、綾瀬悠希と目を合わせることができなかった。

彼はいつも視線で相手を威圧するのが得意だったが、まさか自分が他人の目を見れなくなる日が来る...

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