第53章 これはあまりにも巧すぎる

入籍はしたものの、二通の婚姻届はどちらも望月家に取られてしまったため、綾瀬悠希はかの望月恒がどんな顔をしているのかも知らなかった。

顔を合わせたことはないが、彼女と望月恒はれっきとした合法夫婦だ。

彼女は心の奥底で、その望月恒がイケメンかどうか、密かに期待していた。

俗に言う「夫の容姿は妻の誉れ」。もし望月恒が酷い不細工だったら、彼女は承服できない。きっとその場で離婚を切り出すだろう。

なんといっても彼女は面食いなのだ。

もし相手が病弱な美青年であれば、おばあ様の言葉を少しは考えて、望月恒との関係を進展させてみてもいいかもしれない。

その時、ふと先日ホテルで部屋を間違...

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