第63章 若葉ちゃんがいなくなった

「もう終わったことだから」

心の底から張り裂けそうだったあの日々のことを、凌乐悠はもう口にしたくなかった。あの頃の彼女は誰も信じられず、今もなお、他人を完全に信頼することはできないでいる。

商若灵は少しがっかりしたが、それでも微笑んでみせた。

「この数年、きっと大変だったのね。そばにいてあげられなくてごめん。あの時、私がそばにいられたらよかったのに……」

「あなたがいても何も変わらなかったわ」凌乐悠は首を横に振る。

二人の会話が膠着状態に陥るのを見て、商若灵は慌てて凌乐悠の皿にサーモンを一切れ取ってあげた。「見てよ私ったら、また悲しいことを思い出させちゃって。まずは食べましょ。...

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