第74章 優しい男性が好き

「私、普通よ。どこがおかしいっていうの? あなたこそおかしいんじゃない!」

藤堂譲の顔が曇り、彼は手を伸ばして綾瀬悠希の顎を掴んだ。「少なくとも俺は、酔っぱらって男を見たら片っ端から口説こうとはしない」

顎に走る痛みに、綾瀬悠希は眉をひそめる。彼女は藤堂譲の手を振り払い、その目をじっと見据えた。

「藤堂譲?」痛みの刺激で、綾瀬悠希の酔いが少し覚め、ようやく目の前の人物が誰なのかを認識した。

「呵、やっと俺だと気づいたか」

気づかないはずがない。藤堂譲の彼女を見る目は、いつも三分が皮肉、三分が嘲り、そして四分が無関心で、綾瀬悠希にはあまりにも見慣れたものだった。

あの夜の屈辱を思い出し、...

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