第91章 好きでいてくれてありがとう

綾瀬悠希は壁に背を預け、一本の煙草を唇に銜えた。続けてライターを取り出し、カチリと音を立てて火を点ける。

 その音に反応し、杉山遠と木村笑美が同時に振り返った。

 紫煙をくゆらせる綾瀬悠希の姿を目にし、杉山は呆気にとられたように固まる。

 風が綾瀬悠希の前髪を悪戯にかき乱した。彼女は鬱陶しげにそれを手で払い、煙草を指の間に挟んだまま口を開く。

「木村さん。その写真、杉山さんに見せるつもりで撮ったんですか?」

 まさか杉山の前で堂々と喫煙するとは思わず、木村笑美は言葉を失い立ち尽くしている。

 沈黙する彼女を見て、綾瀬悠希はふふっと冷ややかな笑みをこぼした。

「酒も煙草も、別に後ろめ...

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