第105章

上杉玉夫は年齢も年齢だし、大きな会議の場も何度も踏んでいる。彼自身が議長を務めた国際会議だって少なくない。場を捌く力は並の人間よりずっと上だ。そんな男が、たかが後輩ひとりに追い詰められて面目を失うなんて、あり得るはずがない。

末永言葉が言い終えると、彼は否定もしなければ、その話題を掘り下げることもしなかった。

「デザイン理念については、今日はひとまず置きましょう。理念は人それぞれです。さっき私が言ったのは、あくまで『今の市場の主流』に対しての話です。芸術の方向へ進みたい人がいるなら、それは立派な理想だ。ただし――現実の重みを背負えるなら、ね」

最後の一言は会場全体に向けたものだった。け...

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