第109章

分かりきったことを、わざわざ聞くまでもない。よほどの事情でもなければ、深沢承弦が離婚に同意するはずがないのだから。

「わざわざ俺を呼び出して、言いたいのはそれだけか」

牧野亥は目を上げ、向かいの男を値踏みするように眺めた。

「前に会ったときは、まだ深沢グループを継いでなかったよね。引き継いでから、まだどれだけも経ってないのに……顔色、五年前より悪いじゃない」

深沢承弦はまだ三十そこそこだ。なのに、面立ちは妙に老けて見える。

――感情を擦り減らした顔だ。

「くだらねえ。で、用件は?」

空気が、すっと冷える。

牧野亥も笑みを引っ込め、複雑な顔になった。

「昔の友だちが会いに来る...

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