第114章

末永言葉は、自分がどれほど歩いたのか分からなかった。

カフェを出て、いつもの癖で右へ曲がる。そこから先は、ただ前へ前へ――一度も進路を変えないまま。

不思議なことに、彼女が店を出てしばらくすると雨脚は少しずつ弱まっていった。けれど月は、相変わらず姿を見せない。

まるで、何かを暗示するみたいに。

語がようやく足を止めたとき、末永言葉は気づいた。

……いつの間にか、林田咲子名義のスタジオ、そのオフィス前に立っている。

来るのは、もうずいぶん久しぶりだった。

スタジオは産業団地の中、三階建ての建物に入っている。今夜は三フロアすべてに灯りがついていた。

末永言葉は手についた水滴を軽く...

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