第21章 私は去る

末永言葉は、その瞬間、ぐらりと前へ傾いた。

「きゃ――!」

何かにつかまる暇もなかった。目の前の手すりはあまりに低く、彼女の身体はそのまま勢いよく向こう側へ投げ出される。

闇へ落ちていく一瞬――月光が目の前で砕けて無数の欠片になり、耳を裂く海風のうなりが鋭い笛のような音へ変わり、自分の心臓がひやりと止まる気配さえ聞こえた。

果てのない冷たさが四方八方から押し寄せる。

海水が鼻と口、耳へと容赦なく入り込んだ。

塩辛い。

苦い。

息ができない。

沈む。ひたすら、下へ。

もがこうとしても、助けを求めようとしても、身体は凍りついたみたいにぴくりとも言うことをきかなかった。

...

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