第39章

オフィスに足を踏み入れてもなお、末永言葉には現実味がなかった。

会社に連れてきてもらう――ただそれだけの、傍から見れば取るに足らない行為。けれど彼女にとっては、胸の奥を強く揺らすほど特別な意味があった。

末永言葉は、まっすぐに執務机を見つめた。

昨日、温水真雲はあの場所に立っていた。

そして、彼に身を預けるように寄りかかっていた。

深沢承弦は彼女の胸中を察したように言う。

「今日は彼女は来ない。俺も、できるだけ接触は避ける」

まさかそんな言葉が返ってくるとは思っていなかったのか、末永言葉の唇がかすかに開く。

「……知ってたの」

昨日、自分がここへ来ていたことを。

だからあ...

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