第57章

キッチンでは、深沢承弦がコンロの前に立ち、鍋の中を覗き込みながら具材を返していた。手つきは迷いがなく、何度も同じ朝を繰り返してきたかのように自然だ。

脇の小さなテーブルには、すでにお粥が二杯。小鉢がいくつかと、こんがり黄金色の目玉焼きが一皿。

末永言葉はその光景を見つめたまま、胸の奥に言葉にできないものがじわりと湧くのを感じていた。

背後の視線に気づいたのか、深沢承弦が振り返る。口元がわずかに持ち上がった。

「起きたか。こっち来い」

末永言葉が食卓の椅子に腰を下ろすと、男は汁椀を手に近づいてきた。中身は、彼女の好物――小ぶりのワンタン。皮は薄く、餡はふっくら。澄んだスープには、わか...

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