第63章

「黙りか?」

 もう一発ぶん殴りたい衝動をどうにか抑え込みながら、片桐景真はふっと意味ありげに笑った。

「ちょっと気になるんだけどさ。言葉に問い詰められたときも、お前、そんな顔してたのか?」

 末永言葉――その名が出た瞬間、男の表情がようやくわずかに動いた。

 深沢承弦と片桐景真の間に、もともと話すことなど大してない。たまたま病院で鉢合わせした、それだけのことだ。

 片や部外者。片や恋敵。

 今の夫婦仲がこんな有様だからといって、自分がそこまで落ちぶれて、恋敵と腹を割って語り合うとでも思うのか。

 冗談じゃない。

「仕事のことでは、これからも言葉をよろしく頼む。だが、俺とあい...

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