第64章

男の声を聞いた瞬間、末永言葉の意識は、ほとんど反射のように結婚式当日の絶望へ引き戻された。

まだ三日しか経っていない。あのとき植えつけられた恐怖は、到底薄れるようなものじゃない。もし片桐景臣が突然現れなかったら、どうなっていたのか――考えるだけで背筋が冷えた。

自分を壊したうえで、深沢承弦まで道連れにする。そんなことが、温水真雲ひとりの思いつきでできるはずがない。

その二人が今、腕を組んで自分の前に現れた。それだけで十分な証拠だった。

けれど……さっき北川伊季が口にした呼び方――。

「どういう意味?」

末永言葉は目を細めると、数歩前へ進み、声を落とした。

「あなたが連れ戻したの...

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