第69章

末永言葉は、男が会社に一晩中残っていたことなど知る由もなかった。

署名を終えると、彼女はすぐに手配をかけた。翌朝のうちに離婚協議書の1通を深沢家へ届けさせ、自分はいつも通りの出勤時刻に合わせてSHへ向かった。

片桐景真は本当ならあと数日休ませたかったらしい。だが、彼女の頑なさには勝てず、結局は好きにさせるしかなかった。

オフィスに足を踏み入れた瞬間、末永言葉は無数の視線を感じた。

配属されてまだ半月ほど。自分では同僚たちとも、それなりにうまくやれていると思っていた。けれど今この場では、彼らの目に浮かぶ落ち着かなさも、気まずそうな揺れも、どうしたって見過ごせない。

深沢家の隠し子騒動...

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