第71章

深沢承弦は煙草を一本取り出し、反射的に火を点けかけた。だが、末永言葉を車に乗せていることを思い出し、何事もなかったかのように指先でそれを引っ込める。

彼女がそばにいなかったこの数日で、家に置いてあった高級煙草のストックはずいぶん減っていた。

昔は深沢天佑のほうがよく吸っていて、承弦は残業のときか、苛立ちが抑えきれないときに一本二本、口にする程度だった。

今になって思えば、末永言葉との関係がこじれるたび、彼は煙草に火を点けていた。そうすれば痛みが鈍る気がして、胸の奥が少しだけ楽になる気がして。

「お前は今、危ない」

口にした瞬間、自分の声が掠れていることに承弦自身が驚いた。

「そん...

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