第77章

どうして悔いがないはずがあるだろう。

互いの気持ちを確かめ合えた、その矢先の離婚だ。誰だって、心に穴が空く。

「でも、どれだけ悔しくても……私の周りの人の安全のほうが大事」

彼女が失ったのは、恋だけだ。

それに――誰が決めた? これから先、深沢承弦と可能性がないなんて。

深沢天佑の言ったことにも、一理ある。

今の自分の実力も、立場も、知名度も、まだ深沢承弦に釣り合っていない。

けれど、構わない。

強くなればいい。

深沢承弦の隣に立つ資格があるかどうか――それを決めるのは、他の誰でもない。自分だ。

片桐景臣は、それ以上は深く追及しなかった。

身近な人間の安全を優先する、そ...

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