第9章 金賞

温水真雲の笑みが、一瞬だけ凍りついた。

「末永さん……時間稼ぎじゃないの?」

末永言葉は答えず、審査席へ向き直る。

「一時間ください。証拠は今、手元にありません」

老デザイナーは審査員たちと小声で意見を交わし、やがて頷いた。

「いいでしょう」

温水真雲の横を通り過ぎる瞬間、彼女がふっと身を寄せる。二人にしか聞こえない声で、喉の奥で笑った。

「何の証拠を出すの? あの手稿、もともと私のものなんだけど」

末永言葉の足が、ぴたりと止まる。横目で彼女を見た。

温水真雲の瞳の奥を、得意げな光がひと筋だけ走る。

――ああ、そういうことか。

言葉は返さない。爪が掌に食い込むほど握りし...

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