129

司の視点

里香から新しく送られてきたファイルに目を通していると、スマホが短く震えた。

手に取ると、祖父である九条弘展からのメッセージ。

『明日の昼、雲波亭。遅れるな』

さらに一行、付け加えられていた。

『旧友の孫娘だ。気立ても良く、器量もいい。一度会ってみなさい』

画面の上で指が止まる。反射的に「行かない」と打ち込みそうになったが、祖父の落胆する顔が脳裏をよぎり、結局文字を消した。代わりに短い返事を返す。

『分かりました』

翌日の正午。俺は時間通りに雲波亭へ到着した。

ダークグレーのスーツ。顔には何の感情も浮かべていない。まるで、どうしても外せない仕事の会議にでも向かうかの...

ログインして続きを読む