第26話

里香の視点

女の子の視線を追って振り返ると、ひとりの男が歩いてくるのが見えた。

年齢は三十代前半。彫りの深い顔立ちに、落ち着いた佇まい。黒のトレンチコートを羽織り、一挙手一投足に大人の男特有のオーラを漂わせている。

私は一瞬、息を呑んだ。大げさではなく、この男の容姿と放つ空気感は、和也と肩を並べるレベルだ。

彼が先に手を差し出してきた。

「白石さん。初めまして、九条司と申します」

「九条さん。お会いできて光栄です」

彼の手を握り返す。

「パパ!」

小さな女の子が不意に椅子から滑り降り、その男に向かって飛びついていった。高く澄んだ、甘い声。

彼の厳格そうな顔に、すぐさま父親...

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