第35話

里香の視点

黒のベントレーが城の門を通り抜けたとき、車窓越しに、見慣れないロールス・ロイスが中庭に停まっているのが見えた。

そのナンバープレート――見覚えがある。水原家が氷華郷でよく使っている車だ。

和也の両親が来ている?

車が停まり、私は助手席のドアを押し開けて降りた。手のひらのガーゼの下で鈍い痛みが走ったが、声には出さず、彼らのあとに続いて中へ入った。

リビングから、子どもの無邪気な笑い声が聞こえてきた。

「蓮、すごいね! 私のよりずっとかっこいいお城だよ!」

「おばあちゃん、見て、これ砲塔! 寧々がね、僕、大きくなったら将軍になれるって!」

中へ入ると――絨毯の上で、蓮...

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