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第1章

里香の視点

千尋の誕生日が、あっという間にやってきた。

祖母の家は、郊外の中腹にひっそりと佇んでいる。水原の本邸と比べればこぢんまりとしているが、古い屋敷ならではの静謐な気品が漂っていた。

今日は祖母である千尋の、八十歳の傘寿を祝う宴だ。敷地内は華やかに飾り付けられ、招待客の車が次々と門をくぐってくる。

私は朝早くから到着していた。

母屋の玄関口に立ち、ひっきりなしに訪れる客を出迎える。

午前十時頃、一台の黒いベントレーが敷地内に滑り込んできた。

親戚のひとりと談笑していた私は、視界の隅に見慣れた人影を捉えたが、言葉を途切れさせることなく会話を終えた。

車から降り立...

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