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里香の視点

うつむいて、老人の胸元に下がっている小さな札を見た。

そこには住所と電話番号が書かれていた。

事情はだいたい読めた。――認知症だ。迷子になったときのために、家族がわざわざ連絡先を身につけさせているのだろう。

スマホを取り出し、その番号にかけた。

コール音は長く続いたが、誰も出ない。

時間を確認し、再び老人を見た。彼女は街灯の下に立ち尽くし、その瞳には困惑の色が広がっている。まるで岸辺を見失った葉のように、静かに漂っていた。

「おばあさん、家まで送りましょうか」

彼女はすぐに頷き、少し子供っぽい嬉しそうな顔を浮かべて、私の後について駐車場へと歩き出した。

住所はそ...

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