第103章 借りをすべて返す

「へえ、そう。それはおめでとう」

 湯川優は適当に相槌を打った。

 若林夢子には言っていないが、あの西海岸の別荘は優の名義であり、内装にはほとんど手をつけていない。若林夢子が勇んで乗り込んだところで、そこにあるのはコンクリート打ちっ放しの廃墟と大差ない代物だろう。

 しかし、若林夢子のあまりに得意げな様子を見て、優は真実を突きつけるのを躊躇った。彼女自身がその目で見て、絶望するのを待つとしよう。

 若林夢子が家政婦を顎で使い、大仰に引っ越し作業を進める中、優は彼女を無視して自室に戻り、身支度を整えた。

 準備を万端に整えると、彼女は書斎の扉をノックした。

「入れ」

 城田景行の...

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