第115章 指先一つで灰燼に帰す

城田景行の瞳は、深く澱んだ闇を湛えていた。

彼は湯川優の体を裏返すと、すぐさまハイムリック法を施し、肺に入り込んだ水を吐き出させようとする。

「ゴホッ……ゲホッ……!」

湯川優は全身が凍えるように震え、無防備な姿を晒していた。口と鼻からは、とめどなく水が溢れ出てくる。

肺の中の水があらかた吐き出されたのを感じて初めて、彼女は城田景行の耳元で、消え入りそうな声で懇願した。

「連れてって……。今すぐ、ここから連れ出して」

「ああ、わかった。すぐに出よう」

城田景行は多くを語らず、湯川優を横抱きに抱え上げると、大股で歩き出した。

彼女を助手席に乗せると、アクセルを一気に踏み込み、そ...

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