第435章 若林夢子の挑発

ドアが閉まった、その次の瞬間。彼女は手にしていた果物をそっと置き、表情をすっと消した。瞳には薄い靄のような冷たさがまとわりつき、温もりも柔らかさも、どこにも見当たらない。

そのままソファに座り込み、しばらく身じろぎもしない。静けさを破ったのは、デスクの上で鳴り出したスマホだった。

立ち上がって手に取る。見覚えのない番号。

反射的に分かった。この電話は、あの写真の件だ。そうでなければ、こんなタイミングの一致はありえない。

通話ボタンを押し、彼女は黙ったまま相手が先に口を開くのを待つ。

向こうも同じ考えだったのだろう。沈黙が、三十秒近く続いた。

痺れを切らした相手が、ようやく言う。

...

ログインして続きを読む