第90章 兄妹の口喧嘩

「ああ、心配しなくていい。それに、仮にこの件が俺に関係していたとしても、君に罪を被せるなんてありえない。そんなことをしたら、男としての面目が立たないだろう?」

 松本隆一は彼女を見つめる。その瞳からは、溢れんばかりの慈愛が感じ取れた。

 湯川優は、気まずそうに視線を逸らす。

 心の中に憂いが広がる。彼への借りがまた増えてしまった気がした。彼の想いに応えることはできないのに、こうして何度も迷惑をかけてばかりいる。

 今ある恩義を、どうやって返せばいいのだろう。

「隆一兄さん、余計なことは言いません。ありがとう」

 湯川優は心からの感謝を告げる。「ありがとう」という言葉以外、何を言え...

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