第106章

三人称視点

 翌日、高木文弘は愛梨を連れて、レッドストーン・シティで最も高級なフレンチレストランを訪れた。

 店内に足を踏み入れると、迷うことなく窓際の席を選んで腰を下ろす。

 窓の外を行き交う人波を眺めながら、彼はふと物思いに沈んだ。

 離婚する前、デートのたびに高木愛美は好んで窓際の席に座り、彼を待っていたものだ。

 彼が姿を見せた瞬間、すぐに気づけるから――彼女はそう笑っていた。

 当時の彼は常に多忙を極め、待ち合わせには決まって遅刻し、愛美を長々と待たせてばかりいた。

 だが、今はもう違う。愛美が彼を待つことは二度とない。

 文弘の胸の奥に、チクリとした悔恨がよぎる。

「わあ!...

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