第113章

 倉庫内の空気がまるで引火したかのように張り詰める中、愛梨は鋭く風向きの変化を読み取っていた。

 周囲を取り囲む記者たちの、貪欲な視線に気づいたのだ。

 これは彼女にとって、一発逆転の絶好のチャンスだった。愛美の罪を決定づけ、世間の同情を一身に集めてみせる。

 愛梨は首筋のまだ血が滲む傷口を押さえながら、わざとカメラの前にその傷を晒した。

「皆さん、見ましたか? ゲホッ、ゲホッ……」

 彼女はさらに悲痛な声を張り上げ、咳き込みながら愛美を指差し、涙ながらに訴えかけた。

「彼女が誘拐犯を逃がしたんです! あのイカれた女、さっきまでナイフで私を殺そうとしていたのに……愛美さんは……愛美さ...

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