第115章

 ゴールデンムーン邸、書斎。

 高木文弘は使用人やボディガードをすべて下がらせ、一人ソファに深く腰を下ろした。

 頭の中がぐちゃぐちゃに掻き乱されている。

 倉庫で野口裕史が放った言葉が、呪いのように耳の奥でリフレインしていた。――石楠花の匂い。

 その匂いが何を意味するのか、大人のアルファなら誰だって知っている。

「くそっ……」

 苛立ち紛れにポケットからスマホを取り出し、時間を確認しようとしたはずの指が、何かに取り憑かれたように通話履歴をタップしていた。

 画面が明るくなった瞬間、全身の血が凍りついた。

 一番上に表示されている履歴――

【発信 愛美】

【通話時間 04:58】...

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