第142章

三人称視点

 冷たい川の水が肺を満たし、里奈の意識は急速に遠のいていく。

 石の重みに引っ張られ、身体は不可逆的に川底へと沈んでいく。

 もう駄目だ、ここで死ぬのだ。

 そう覚悟した、まさにその瞬間。

 何者かの手が、彼女の襟首をがっしりと掴んだ。

 直後、身体がふわりと軽くなる。

 全身ずぶ濡れの高木文弘が、すでに気を失った里奈を引き摺るようにして水面から顔を出した。

「くそっ!」

 高木文弘は悪態をつきながら、里奈に縛り付けられていた縄を引きちぎり、重石を蹴り飛ばした。

 三十分前。野口裕史から、病院の監視カメラに南川茜の車が裏口のゴミ捨て場から走り去るのが映っていたと連絡...

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