第154章

薄暗い階段の踊り場。南川正晴は床にへたり込み、スマートフォンをきつく握りしめていた。

身体の震えは一向に収まらず、全身から冷や汗が噴き出している。

「高木一郎……」

泣き出しそうな声で、南川正晴はしどろもどろに報告を始めた。

「高木文弘が今出ました。俺、この耳で聞いたんです。エレベーターの前で野口裕史に電話してて、愛美のマンションに行くって。でも……その途中で、スマホの電源が切れたみたいで」

電話の向こうは、二秒ほど沈黙した。

やがて、高木一郎の底冷えのするような、落ち着き払った声が響く。

「何を慌てている」

一郎はふっと鼻で笑った。背景からは、ワイングラスが触れ合う澄んだ音が聞こ...

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