第20章

三人称視点

 野口裕史は、血まみれになった高木愛美を抱き起した。

 彼女の身体はぐったりと腕の中で力なく崩れ、頭部からはなおも絶え間なく血が滴り落ちている。床にはすでに、赤黒い血だまりが広がっていた。

 さらに恐ろしいことに、彼女の下半身からも出血が続いている。

 鮮血が衣服を赤く染め上げ、野口裕史の腕を伝ってポタポタと落ちていく。

 彼の腕は小刻みに震え、今にも彼女を落としてしまいそうだった。

 理解できなかった。ただ階段から落ちただけなのに、なぜこれほどの血が流れるのか。

「先生! 先生!」

 野口裕史は喉が裂けんばかりに叫んだ。

 救急救命室のドアが開き、中から平野綾子が...

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