第二十二章

高木文弘視点

 車がゴールデンムーン邸に滑り込んだときには、すっかり夜も更けていた。

 病院からの帰り道、ずっと愛美の「顔も見たくない」という言葉が頭の中でリフレインしていた。

 俺は苛立たしげに車のドアを押し開け、真っ直ぐに屋敷へと向かった。

 エンジン音を聞きつけた使用人が、玄関の扉を開ける。

「アルファ、夕食の準備をいたしましょうか」

 俺は煩わしそうにネクタイを緩めた。

「いらない」

 以前なら、こんな質問に答える必要すらなかった。

 愛美がいつも前もって厨房で準備を整え、自ら俺の元へ運んできてくれていたからだ。

 扉を開けた瞬間、俺を出迎えたのは見慣れた温かい灯りでも、...

ログインして続きを読む