第28章

高木文弘視点

 ガシャン!

 壁に叩きつけられた酒瓶が砕け散り、ガラスの破片が床一面に飛び散った。書斎の入り口に立つ二人の使用人は、怯えきって顔を上げることもできない。

「出て行け!」

 俺が低く怒鳴りつけると、彼女達はビクッと身を震わせ、逃げるように扉を閉めて立ち去った。

 ウイスキーを呷るように喉へ流し込む。だが、脳裏に焼き付いているのは数時間前の光景だった。

 土砂降りの雨の中、高木愛美は丸山大翔のトレンチコートを羽織り、一度も振り返ることなくあの忌々しい車に乗り込んだのだ。

 俺という夫など最初から存在しなかったかのように、あまりにもあっさりとした別れ際だった。

「クソッ」

...

ログインして続きを読む