第36章

藤原陽子視点

 藤原家の別荘。

 藤原陽子は、目の飛び出るような値段のオートクチュールのウェディングドレスに身を包み、鏡の前に立って自らの美しいシルエットに見惚れていた。

 鏡に映るその姿は、まるでプリンセスのよう。

 このドレスを着て、北条遥輝と共に結婚式のヴァージンロードを歩く自分の姿を夢想する。

 北条家の女主人となり、誰もが羨む存在になるのだと。

 そのとき、けたたましい着信音が彼女の甘い空想を打ち破った。

 画面に表示された名前を見て、陽子は眉をひそめ、通話ボタンを押す。

「もしもし」

 電話の向こうから、今井渉の焦りきった声が飛び込んできた。

「藤原さん。大変...

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