第38章

高木文弘視点

 南川茜の顔に浮かんでいた笑みが、一瞬だけ引きつった。この距離なら、彼女の僅かな反応も俺の目にはっきりと映る。

 だが、認めざるを得ない。彼女は天性の女優だ。

 ほんの瞬きする間に、その微かな動揺は綺麗さっぱり消え失せた。まるでこの世の理不尽をすべて背負わされたかのように、彼女の大きな瞳に涙が浮かび、今にも零れ落ちそうに揺れている。

「高木文弘……」

 その声は震え、微かな泣き声が混じっていた。

「私を、疑っているの?」

 彼女はベッドの布団を跳ね除け、裸足のまま俺の目の前まで歩み寄ると、すがるように顔を上げた。堪えきれなくなった涙が、白い頬を伝って滑り落ちる。

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