第四十章

高木愛美視点

「子供を返して!」

 ガバッとベッドから跳ね起き、荒い息を何度も吐き出す。

 またあの夢だ。血まみれの赤ん坊を抱きかかえた南川茜が私に向かって笑い、その傍らで高木文弘が冷たい目で見下ろしている――あの悪夢。

 心臓が警鐘を鳴らすように激しく打ち、私は無意識に掛け布団を強く抱きしめて身体を丸めた。

 恐怖がまだ身体にへばりついているというのに、ふと鼻先を掠めたのは、よく知る匂いだった。

 高木文弘のフェロモンだ。

 あまりにも濃密なその香りは、ついさっきまで彼が隣に横たわっていたのではないかと錯覚させるほど。

 首をぎこちなく巡らせ、隣の枕へ視線を落とす。そこには確...

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