第42章

高木愛美視点

 マンションを出る頃には、外は突然の大雨に見舞われていた。

 野口裕史からの援助は一切突っぱね、自分の荷物すらすべて投げ捨てて、私は一度も振り返ることなくマンションを後にした。

 少しでも遅れれば、高木文弘が心変わりするのではないか――それだけが恐ろしかった。

 篠突く雨は瞬く間に全身をずぶ濡れにしていったが、寒さは微塵も感じなかった。むしろ、自由を取り戻した歓喜が身体の奥底から湧き上がってくる。

 ふと、目の前を眩い光が横切った。私は目を細め、遠くの車を警戒するように見据える。

「愛美!」

 一人の男が車から降り、傘を広げて私の目の前まで駆け寄ってきた。

 私は...

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