第45章

高木文弘視点

 俺は手の甲にある、血に染まった結び目をじっと見下ろした。

 その形は、記憶の奥底にある光景とピタリと重なり合っていた。

 十年前、あの漆黒の森で、俺の胸は狼の爪によって引き裂かれた。

 意識が遠のく中、ある少女がまさにこの手口で傷口を処置してくれたのだ。

『少し我慢して、寝ちゃダメだよ』

 あの幼い声と、先ほどの高木愛美の冷ややかな声が、脳内で何度もぶつかり合う。

 俺は拳を強く握り締め、野口裕史に命じた。

「スワンレイク・アパートメントに戻れ!」

 俺はそのまま南川茜の部屋へと直行した。

 彼女は一瞬呆然とし、そして血の滴る俺の右手に目を留めた。

「嘘! 高木...

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